また私の手元に帰ってきた、このケース。
手のひらに乗るくらいの大きさです。
娘が大学生になるときに、たしか針と糸を入れて「小さなお針箱」として持たせたんじゃなかったかな?
40年近く前にパリへ行ったとき、エッフェル塔の展望台で買ったお菓子です。
底の部分は年月とともに黄色く変色してしまったけれど、蓋は金属なのでまだきれい。
ケースの蓋のアンティーク調の図柄が素敵で、またそれがレトロな手動の自動販売機に
入って売られていたので、面白半分に買った記憶があります。
コインを入れて、レバーを手でガチャっと下げるとポトンとひとつ出てくる仕掛けです。
蓋を開けると、チャイナマーブルのちょっと小さいくらいの形をした白いお菓子が
いっぱい入っていました。ひとつ口に含んでみたものの、その甘さと匂いの強烈なこと!
そのころの私には生まれて初めて嗅ぐ、不思議かつ苦手な香りでした。
食べないでいつまでもケースの中に入っていたものだから、何年たっても蓋を開けると
その香りがしていたものです。
その香りがアニスだということを知ったのは、ワインの勉強を始めてから。
アニスは古代エジプト時代からある最も古いスパイスのひとつで、
リコリス(=甘草・かんぞう)によく似た少し甘めの味と香りがあります。
日本人には馴染みのない香りですよね~
”アニスのボンボン”は、なんと700年も前から作り続けられている伝統菓子。
14世紀にブルゴーニュ地方のディジョンにあるフラヴィニー修道院で作られるようになったとか。
元々は結婚式の時に男性から女性に送られたキャンディだったそうです。
アンティークなパッケージの恋人たちは、そういう謂れがあったんですね・・・
最近ではケースもリニューアルされ“フラヴィニー(Flavigny-sur-Ozerain)”という地名のロゴが
強調されているそうです。でも、こういう伝統的なデザインも人気で、昔からのケースのコレクターも
いるらしく、上のキャンディが入ったケースは復刻版だそう。
よ~く見ると、昔のものとはちょっと違います。
40年も前の私のものは、今や「お宝」になっているのかも・・・
フランスの美しい村として、また映画「ショコラ」のロケ地としても有名になってますものね。
いつかブルゴーニュへ出かけるときには、この中世の面影のある村へ是非立ち寄ってみたい。
そして、また名物の“アニスのボンボン”を買って来ましょうかね・・・